SHONAN TRAINING DEPT. MAGAZINE

変われ!東京・変われ!トレーニング環境

変われ!東京
自由で、ゆるくて、閉じない都市
隈研吾 清野由美



久しぶりの「偏った読書感想文」です。
というより、久しぶりのブログ更新です....
今回の書籍は、少し前に父から
「鎌倉のお店のことが載ってるよ。」
とLINEがきたことが読むきっかけになったのですが、誰もが知る建築家の隈研吾さんと、ジャーナリストの清野由美さんとの対談形式?のものでした。
僕は知りませんでしたが、どうやらお二人で過去にもいくつか本を出されているようです。

内容はもちろん、建築の話や街づくりに関してのもので全くの専門外のことなので、なるほどなーそういうことなんだなーと理解できる部分もあれば、何言ってんのかよくわかんないな...という部分もありました。

が、ざっっっっっっっくり要約すると、
高度経済成長の流れのまま街を台無しにするような効率性重視のでかいコンクリートのハコばっかりつくって横のつながりを断つ閉鎖的な街じゃなく、建築家自身もリスクを背負いながら文化やストリート、地元、ヘリテージ、コミュニティといったものを尊重しながら暮らし方や生き方を視野に入れた小さくてもおもしろいハコ作り、街づくりをしていこうよ。
コロナ禍のこの状況はそうなるためのいいタイミングであり、東京が変わるきっかけでもある。
という内容でした。
(たぶん....客観的にみたら違うかもしれませんが、僕自身はそんな感じで受け止めています。)

これは建築や街づくりの話なんですが、この流れや考え方は現在のトレーニング業界でも学べる点はあるのではないかと思いながら読んでいました。
コロナ禍の今、スタジオやプール完備のフルサイズの大手フィットネスクラブがどんどん閉店していく一方で、24時間営業でスタッフ常駐ではないエニタイムフィットネスはすごい勢いで店舗数を増やしています。
《ニーズはパーソナル?24時間?「フィットネスクラブ」「スポーツジム」検索トレンド》


サイズのことだけでいえばエアロビクスやプール、お風呂など様々な設備、コンテンツが充実している大手フィットネスクラブの方が当たり前ですが大きなハコであるわけですが、フィットネスクラブというものは確かに街に機能しており、近隣に住む住人にとってはコミュニティが生まれる場所の一つとなっています。

しかし、コロナ禍では不特定多数の人が一度に出入りするということや、エアロビクスなど密になりやすい空間でのスタジオレッスン、また高齢者の方が多いということもあり、その機能を果たせなくなり閉店に追い込まれてしまう店舗も多いのでしょう。
一方、エニタイムフィットネスに代表される24時間ジムは、その営業時間の長さや、どの店舗でも利用可能、そしてスタジオやプール、お風呂などがなく筋トレやカーディオトレーニング専門ということで入会する層が限られ、そして利用時間も分散するため大手フィットネスクラブに比べれば混雑しにくいシステムになっていると考えられます。

ハコの大きい小さいは一旦置いておいて、
(ちなみに今回の書籍でも大きいハコを単に否定しているわけではないので悪しからず。重要な点としてはハコの大きい・小さいに関わらずハコの在り方、存在意義、街や人との関わり方、という部分かなと。)
わかりやすく比較するならば、
効率は悪いがコミュニティの生まれるフルサイズ大手フィットネスクラブ

効率はいいがコミュニティがうまれない24時間ジム
ってところですかね。

これ、もうおわかりだと思うんですが、ふたつともあるからバランスがとれているんですよね。
そもそも、24時間ジムが台頭してきた理由としては、以下のようなものが主な理由だと考えています。
・限られた営業時間内では利用できないことが多い。
・マシンやフリーウェイトエリアが混雑しており、効率良くトレーニングできない。
・そもそもフリーウェイトエリアが狭く、器材が充実していない。
・設備やコンテンツが充実しているのはわかるけど、会費が高い。
・筋トレだけしたいのに、利用しない設備やコンテンツで料金とられているようで納得いかない。
etc...

24時間ジムは以上のようなことをクリアにするシステムで確かに効率がいいですが、先ほども書いたように利用する層は限られます。
基本的にトレーニング上級者のイメージです。
スタッフが常駐していない点でも、トレーニング初心者や高齢の方はあまり選択肢に入ってこないことが考えられます。

となると、今の状況ではトレーニング初心者や高齢者のトレーニングする場所が限られていってしまう可能性が高くなります。
そうなると結局この業界は頭打ちになり、トレーニングというものがより一層特別なものになってしまいかねません。
トレーニングに慣れている上級者だけのものとなってしまい、本来トレーニングするべき・したほうがいい人たちが手を出しづらいハードルの高いものになってしまうことが予想されます。
閉鎖的な空間ばかりが増え、コミュニティや文化といったものの尊重なくして街は発展しないのと同じです。

先ほども比較したように、トレーニング業界が盛り上がってトレーニングをする人たちが増え、そして継続していってもらうためには、
フルサイズ大手フィットネスクラブのようなハコにかたよりすぎてもダメですし、エニタイムフィットネスのような効率重視のハコにかたよりすぎてもよくないと感じています。

隈さんが本書の中で言っているように、建築家自身もリスクをおかしながら街や都市の未来を考え実行していかなければいけないのだとしたら、トレーニング業界で活動する人たちも、市場がどーのこーのとかももちろん大事ですが、目先の利益や自己満足だけにとらわれることなく、トレーニングする人たちや業界自体の未来まで視野に入れて環境を整えていく必要があるのではないかと感じます。

それがビジネス的にかっこよく言えばビジョンという言い方をするのかよくわかりませんが、自分の店だけ・自分の会社だけよければいいというようなことでは業界は発展しないでしょう。

前からも言っていますが、この業界にとって重要なことは
「お客さんに自分の店を続けてもらうことではなく、トレーニング自体を続けてもらうこと。」
「自分のお店や会社の良さを知ってもらうのも大事ですが、トレーニング自体の良さや気をつけるべき点を伝えること。」
だと個人的に思っています。

本書の中でも出てくる、谷中の「hanare」
街自体が宿泊施設という考え方だから、宿泊者が街全体を体感できるというもの。
土地のない日本、街との関わり方という点でとても理にかなっていますし、何より面白い。

今後、おそらくトレーニングや運動というものはより人々の生活に根付いたものになっていくと思います。
そんな中で、トレーニングジムというものが
・上級者だけの場
・コミュニティのうまれない閉鎖的な空間
・効率が悪く、会費が高い
というイメージを払拭したものになるように今一度、未来に向けて考えていく必要があるなと本書を読みながら感じました。

コロナの終わりはきっとくる。
そうなったときに街は自由になり、他の業界は工夫をし形をかえて発展していったなかで、トレーニング業界はどうなんだ?ってなったとき、
オンライン主体、家トレ主体、24時間ジム主体...みたいな寂しい楽しくない結果になっているのは御免だ。


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隈さんがトレーニングジム作ったらどんなジムになるんだろう...?


















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